公開日:2026.07.21

最終更新日:2026.07.21

色をなくしたポテトチップスが、いちばん目立っていた話

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システムエンジニア・コーダー
宮地健太朗

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目次

コンビニの棚で、銀色の袋に目が止まった

先日、仕事の合間にコンビニへ寄ったときのことです。

なんとなくお菓子の棚の前を通りかかったら、銀色のポテトチップスの袋にふと目が止まりました。

いつものお菓子売り場は、赤や黄色やオレンジで、とにかくにぎやかです。各社が少しでも目立とうと、色を競い合っているような場所です。そのなかで、その袋だけが白黒でした。正確には、銀色の地に黒で印刷された、色味のないパッケージです。

最初は新商品か何かかと思いました。でも見覚えのあるロゴだし、商品名もいつものものです。色だけが、すっぽり抜け落ちている。

不思議なもので、まわりがカラフルなぶん、その一袋だけが妙に浮いて見えました。にぎやかな教室で、一人だけ黙っている人がいると、かえって目で追ってしまう。あの感覚に近かったです。

これ、ニュースで見たやつだ

しばらく眺めていて、思い出しました。

これ、ニュースで見たやつだ、と。

カルビーが2026年5月12日に、一部商品のパッケージを白黒の2色に変更すると発表していました(出典:ITmedia、2026年5月12日/Bloomberg、2026年5月12日)。対象はポテトチップス うすしお味やかっぱえびせん、フルグラなど14商品で、店頭では5月25日の週から順次切り替わるとされています(出典:産経新聞、2026年5月21日)。

理由は、中東情勢の影響でナフサの調達が不安定になったことだと説明されています。ナフサというのは石油から作られる基礎的な原料で、プラスチックや印刷インキのもとにもなります。そのインキの色数を従来から2色に減らすことで、調達のリスクを抑え、商品の安定供給を優先するための対応だと公表されていました。

つまり、狙ってオシャレにしたわけでも、話題づくりのために色を抜いたわけでもありません。あくまで、原材料の事情による苦肉の策です。

このニュースはかなり大きく扱われていました。テレビのニュースやワイドショーで何度も取り上げられ、官房副長官の会見でも触れられたほどです。僕自身、その白黒パッケージを実物で見るより先に、画面の中で何度も目にしていました。

苦肉の策のはずが、なぜか手が伸びた

ここで、自分の行動を振り返ってみます。

僕はそのとき、ポテトチップスを買うつもりはありませんでした。もともと新商品やパッケージの変化に、めったに反応するほうでもありません。それなのに袋をしばらく眺めて、最終的に一袋カゴに入れていました。

なぜ手が伸びたのか。理由は、たぶん二つあります。

ひとつは、単純に棚で目立っていたからです。まわりが全部カラフルななかで、色のない袋はかえって異質でした。人の目は、まわりと違うものに自然と引きつけられます。にぎやかさのなかの静けさは、それ自体が目印になるんだと思います。

もうひとつは、ニュースで知っていたからです。何度も画面で見ていたものを、現実の棚で見つけた。そうすると「あ、これか」という小さな発見があって、つい確かめたくなる。知っていたからこそ、見つけたときに反応してしまったわけです。

棚での意外性と、事前の認知。この二つが重なって、買うつもりのなかった僕の手を動かしました。

狙っていないのに、強い広告になっていた

もちろん、これは僕一人の話です。白黒になって寂しいという人もいるでしょうし、中身が同じなら気にしないという声も報じられていました。全員が僕のように手を伸ばすわけではありません。

それでも、本来はコストと供給のための、後ろ向きな判断だったはずです。それが結果として、棚でいちばん目立つ存在になり、全国ニュースで何度も名前を呼ばれ、買うつもりのなかった人にまで手を伸ばさせている。

意図していなかったかもしれないけれど、これはずいぶん強い広告として働いていたのではないか。そう感じました。

お金をかけて派手な広告を打っても、見た人の記憶に残らないことはよくあります。逆に、色を抜いただけのパッケージが、これだけ語られ、これだけ目を引いている。

人を動かすのは、どうやら色の鮮やかさや情報の多さではないようです。 まわりとの違いと、知っているという文脈。その掛け算のほうが、ずっと効いていました。

きれいに整えることと、目を引くことは違う

この話は、ふだんの発信にもそのまま当てはまる気がしています。

僕らはつい、情報をきれいに整えようとします。色を足し、要素を盛り、見栄えを良くする。そうすれば伝わるはずだと思いがちです。

でも、整えれば整えるほど、まわりと似てきます。にぎやかな棚に、もう一つにぎやかな袋を並べるようなものです。そうなると、どれだけ手をかけても、その他大勢に埋もれてしまう。

意図していたかはわかりませんが、今回のポテトチップスが教えてくれたのは、その逆でした。足すのではなく、抜いたほうが目立つこともある。そして、見る人がすでに知っている文脈に乗っかれたとき、その効果はさらに大きくなる。

何かを発信するとき、もっと足さなきゃと考える前に、一度立ち止まってみる価値はあると思います。 同じような投稿や資料が似たトーンで並ぶなかで、自分の一本はどこが違うのか。読み手はそれを、どんなニュースや空気のなかで目にするのか。

派手にすることよりも、引っかかる理由をひとつ持たせること。それだけで、伝わり方は変わるのかもしれません。

色をなくした一袋のポテトチップスが、僕にそんなことを考えさせてくれました。

システムエンジニア・コーダー
宮地健太朗
1994年生まれ。東京都小平市出身。大学院では工学部機械工学科を専攻。卒業後は、医療機器メーカーで研究・フィールドエンジニアとして従事。その後エンジニアとして独立し、2024年より株式会社YOAKEに参画。フロントエンドやWordPress構築に携わっており、中でも管理画面の構築を得意としている。社内の業務改善にも意欲的に取り組んでおり、自動レポート作成ツールの構築・実装や、YOAKEのオウンドメディアのバックエンド構築などにも関わっている。
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