公開日:2026.10.20

最終更新日:2026.10.20

ライブの合間に、まんまと好きになる。フジロックは協賛企業ブースまでおもしろい!

  • マーケティング
  • コラム
WEBディレクター
山田安紀子

「夏の風物詩」と聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか?

花火、海水浴、盆踊り。冷房の効いた部屋で食べるアイスも、現代における立派な夏の風物詩かもしれませんね。

我が家にとっての夏の一大イベントは、「フジロックフェスティバル」に行くことです。

私が初めてフジロックに参加したのは、2011年。当時はもっぱら邦楽ばかり聴いていましたが、その年に出演していたアークティック・モンキーズやケミカル・ブラザーズ、遠い異国からやってきた名前も知らないバンドのライブに圧倒されました。

世の中には、私が知らない素晴らしい音楽がこんなにたくさんあるのか。

その衝撃以来、ほぼ毎年のように苗場へ通っています。

今年もThe xx、TURNSTILE、BASEMENT JAXX、サニーデイ・サービス、ANGINE DE POITRINEなど、国内外のさまざまなアーティストの音楽を聴くことができました。最高です。語彙力は苗場に置いてきたので、もう「最高」で押し切ります。

ただ、私がフジロックで楽しみにしているのは、アーティストのライブだけではありません。
会場内に並ぶ、スポンサー企業の出展ブースもおもしろいのです。

企業はさまざまな企画を通して、商品の魅力を伝えたり、SNSのフォロワーを増やしたり、既存顧客にもっとブランドを好きになってもらおうとしたりしています。

しかも相手は、次に見るライブのことで頭がいっぱいだったり、朝からビールを飲んでいたり、雨や暑さで若干もうろうとしていたりするフジロッカーです。

そんな人々を、どうやって振り向かせるのか。

今回は、今年のフジロックで「これはおもしろい」と感じた企業ブースを、来場者としてまんまと楽しんだ感想と、ほんの少しのマーケティング視点を交えながらご紹介します。

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目次

不便なのに、なぜ毎年行ってしまうのか

フジロックの魅力は、挙げればキリがありません。

音響がいい。自然が豊か。そんな自然の中で朝から飲むビールは、なぜか日常の10割増しでおいしい。ごはんもおいしい。そして何より、今まで知らなかった素敵な音楽に、不意に出会えます。

一方で、不便なことも山ほどあります。

ステージ間の移動距離は長く、雨対策も暑さ対策も必要。タイミングを外せば、トイレもお風呂も食事もひと苦労。数万人が集まる山の中なので、当然といえば当然なのですが、日常生活のようにはいきません。

若いころは「レインウェアさえあれば何とかなる」と思っていました。

しかし今では、防水性、速乾性、椅子の重量、休憩場所、混雑する時間帯まで考えています。人は経験によって成長するのです。体力の低下を、知恵と装備で補っているだけともいえますが…。

毎年、前年の反省を生かして装備や過ごし方を改善し、「今年の私は去年より苗場に強い」と感じられるのも、フジロックの楽しみのひとつです。

だからこそ、企業ブースも、フェスならではの環境や来場者の困りごとに寄り添っているほど印象に残ります。

ただ商品を並べるのではなく、「今、この場所にいる人は何を欲しがっているのか」まで考えているブースは強いのです。

商品説明より、まず体験。「TABASCO®」と「Barbour」のうまさ

TABASCO®:ブースの外まで商品との接点を広げる

言わずと知れた有名ホットソースブランド「TABASCO®」のブースでは、会場内の飲食店で購入した商品を持ち込み、3種類の製品を自由にかけて楽しめる企画や、SNS投稿でミニチュアサイズのタバスコがもらえる企画が展開されていました。

しかし、さらにおもしろかったのが、「会場内の飲食店とコラボレーションしていたこと」です。

今年は会場内24スポットに「給辛所」が設けられ、12店舗ではタバスコを使った特別メニューを提供。そのほかの対象店舗でも、料理やドリンクに好みのソースを加えられる仕掛けが展開されていました。

通常、企業ブースと来場者の接点は、その区画の中だけに限られます。

しかしTABASCO®は、会場内の飲食店と組むことによって、ブースの外にも商品の体験場所をつくっていました。

しかも、調味料は商品説明を読むより、味わってみた方が圧倒的に早い。

実際にフェス飯へかけて味わえば、「タバスコって定番の赤いやつ以外にも、こんな味があるんだ」「家に置いておけば、いろいろな料理に使えそう」と、日常で使う場面まで想像できます。

ただ商品名を覚えてもらうのではなく、利用シーンまで体験してもらう。

購買行動につながりやすい、実においしい施策です。

Barbour:フェスでの「困りごと」を、そのまま商品体験に変える

英国発のライフスタイルブランド「Barbour(バブアー)」は、今年フジロックへ初出展しました。

特に秀逸だったのが、公式Instagramをフォローした来場者に、レインブーツを無料で貸し出す企画です。

レインブーツはフジロックの強い味方ですが、荷物に入れるとかさばります。晴れた場合には、「この大荷物は何のために苗場まで来たのか」と少し思わなくもありません。

そんな悩みに対し、「現地で無料で借りられます」と答えてくれる。

これはうれしい。

ブランド側にとっても、雨やぬかるみ、長距離移動という、レインブーツの実力が伝わりやすい環境で商品を試してもらえます。店舗の鏡の前で数分履くより、苗場を一日歩いたほうが履き心地はよく分かるはず。

ブースではそのほかにも、公式LINEとInstagramをフォローして参加するダーツゲームやフォトスポット、限定ステッカーの配布、フジロックとのコラボアイテム販売などが行われていました。

フォロー獲得、商品体験、SNS投稿、物販。

企業が実現したいことはいくつもありますが、それぞれがフェスを快適に過ごすための体験として、自然につながっています。

何より、「商品を知ってください」ではなく、「雨の日も快適に楽しんでください」という順番になっているのがうまい。

人は、自分を助けてくれたブランドをわりと忘れません。

欲しい、休みたい、投稿したい。人を動かす企画のつくり方

アメリカン・エキスプレス:新規顧客にも既存顧客にも、違うご褒美を

クレジットカードブランド「アメリカン・エキスプレス」、通称AMEXは、ここ数年フジロックへの出展を続けていますが、毎年かなり気合いが入っています。

例えば昨年は、射的や輪投げといった縁日のような空間をつくり、ゲームの結果に応じて景品が豪華になる企画を展開していました。

また、カード会員は会場内の対象飲食店でカード決済をすると10%割引になる特典もありました。

フジロックでは飲食代がじわじわ積み重なるので、これは非常に実利的です。数杯飲めば、割引のありがたみが身に染みます。

DJブースを模した空間で「フジロックの思い出」を熱く語り、そのときの心拍数に応じて判定されるゲームが行われていました。

思い出を話すだけなら、誰でもできます。

しかし「もっと熱く!」「心拍数を上げろ!」となると、知らない人たちの前で急にフジロック愛を叫ぶことになる。

ブランド側が一方的にメッセージを伝えるのではなく、来場者自身に楽しかった体験や感情を語らせる。すると、フジロックの思い出とAMEXのブース体験が、セットで記憶に残ります。

景品のオリジナルキャップやバンダナも、デザインやつくりがしっかりしていて、きちんと「欲しい」と思わせるものでした。

我が家は無事、キャップ1個とバンダナ2枚を獲得。

企業側の思惑どおりです。完全に。

ブースの隣には、カード会員だけが利用できるラウンジスペースも設置されていました。日陰で休めるうえに、香りのよいおしぼりももらえます。

既存顧客には「カードを持っていてよかった」と感じてもらい、非会員には「あのカード、フジロックでやたら待遇がいいな」と思わせる。

既存顧客の満足度向上と、新規顧客へのアピールを同じ場所で成立させているところがうまいと感じました。

コールマン:ノベルティにも「今、欲しいもの」がある

人気アウトドアブランド「コールマン」では、同社の製品が写った写真や動画に「#COLEMAN」のハッシュタグを付け、InstagramやXへ投稿すると特典がもらえる企画を行っていました。

SNS投稿を条件にノベルティを配布する施策は、フェスの企業ブースでは比較的よく見かけます。

今回なるほどと思ったのは、特典が「大判のオリジナルバンダナ」だったことです。

数年前まで、フェスのノベルティといえばマフラータオルが定番でした。

しかしここ数年は、バンダナを頭や首に巻き、日よけ対策とファッションを兼ねて使う人が増えています。

ノベルティは、ロゴが入っていれば何でもいいわけではありません。

その場にいる人が欲しいと思い、実際に使えて、できれば会場内ですぐ身に着けてくれるものを選ぶ。そうすれば、ノベルティを手にした来場者自身が、会場内でブランドの存在を広げてくれます。

流行と実用性をうまく押さえた特典でした。

ちなみに私も欲しかったので、まんまとInstagramのストーリーズへ投稿しました。

企業側は投稿を獲得し、私はバンダナを獲得する。

両者合意のうえで、きれいにマーケティングされました。

日本習字:音楽の余韻を、文字として残す

今年、かなり意外性があったのが、「日本習字」のブースです。

日本習字がブースを出展したのは、会場奥のORANGE CAFE。そこで行われたのが、フジロックで感じた感情や思いを、自由に文字として残す書道体験でした。

ライブの感動、苗場の景色、仲間と交わした会話。

普段なら写真や動画としてスマートフォンに残すものを、自分の手を動かして言葉にするのです。

これは単に、「習字を体験してください」という施策ではないと思います。

デジタル環境の普及によって手書きの機会が減っている今、あえて自分で文字を書く。その行為を通して、体験したことや感情をもう一度かみ締める。

さらにフジロックは海外からの来場者も非常に多いフェスです。その中で日本の書道という文化に触れてもらうことは、日本人にとっての体験価値だけでなく、「日本文化を知る入口」としても機能していたのではないかと感じました。

日本習字は、「きれいな字を書くための習い事」という従来のイメージだけでなく、「自分の思いを残す方法」として、書道の価値を見せ直していました。

しかも、ブースを置いたのは、音楽と自然によって感情が大きく動くフジロックです。

書くことの価値を説明するよりも、思わず何かを書き残したくなる場所へ出ていく。

伝統的な文化を現代の人に届ける方法として、とても美しい企画だと感じました。

企業ブースは、フジロックにあるもうひとつのステージだ

今回紹介した企業に共通しているのは、ただ商品を展示・販売したり、広告を掲げたりしているわけではないことです。

フジロックという場所の特性、来場者の趣味嗜好、その瞬間の気分や困りごとまで考えたうえで、「何をすれば関心を持ってもらえるか」が設計されています。

TABASCO®は、いつものフェス飯に新しい味を加えた。

Barbourは、雨や荷物の悩みを商品体験へ変えた。

AMEXは、思い出を語る高揚感と、会員だけの特別感を醸成した。

コールマンは、今のフェスファッションに合った「欲しいもの」を用意した。

日本習字は、音楽の余韻を文字として残す時間をつくった。

どの企業も、ブランドの説明を一方的に押し付けるのではなく、フジロックで過ごす時間の中に、商品やサービスを自然に入り込ませています。

マーケティング的に言えば、「知ってもらう」「体験してもらう」「SNSで共有してもらう」「ブランドへの好意を高める」という流れがあります。

しかし来場者側は、そんなことをいちいち考えていません。

「楽しかった」

「助かった」

「これ欲しい」

「このブランド、なんかいいな」

そう感じているうちに、ブランドの名前が記憶に残ります。

ターゲットの一員である私も、企業側の狙いどおり、初めてブランドを認知したり、以前から知っている企業を改めて好きになったり、ノベルティ欲しさにSNSへ投稿したりしました。

そして帰宅後には、「企業ブースの施策、よくできていたな」なんて記事まで書いています。

企業側からすれば、思った以上によく育った見込み顧客かもしれません。

この記事を書いているのは、フジロックが終わって約2週間後。年に一度の楽しみが終わってしまった喪失感は未だにあります。

それでもすぐに、「来年は誰が出演するのかな」「次はどんな装備を持っていこう」と、家族や仲間たちと話し始めます。

開催されるのは年に一度。でも、準備と予想と反省会で一年中楽しめる。

つまりフジロックは、年間コンテンツなのです。

来年のアーティスト発表を待ちわびながら、協賛ブースのラインナップと、次はどんな企画で私たちをまんまと楽しませてくれるのかも期待したいと思います。

最後に…フジロック最高!!

WEBディレクター
山田安紀子
名古屋芸術大学デザイン学部を卒業後、株式会社ジオコスに入社。主に採用広報物の企画・ディレクション・編集に携わる。これまでに関わった企業はのべ数百社、インタビューした人は数千人。製造・商社・小売・IT・建設・サービス・不動産など、あらゆる業種の取材・ライティング経験を積んだのち、2020年10月15日から役員として株式会社YOAKEに参画。現在は主にコンテンツライティングや編集、ディレクションを担当。
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