基盤刷新の概要:何が変わったのか
Studioはこれまで、公開サイトをSPA構成で配信していました。ページ遷移時にJavaScriptで動的にコンテンツを描画する方式です。ユーザー体験としてはスムーズな反面、検索エンジンのクローラーがコンテンツを正しく取得できないケースがあり、SEO面での課題が指摘されてきました。
今回の基盤刷新では、このSPA構成をMPA構成に全面移行しています。各ページが独立したHTMLとして配信されるため、ブラウザもクローラーもJavaScriptの実行を待たずにコンテンツを取得できるようになりました。
Studio公式の発表によると、テンプレートベースのサイトではモバイルのLighthouseスコアで100点、CMS利用時でも98前後のパフォーマンスを実現しています。メインコンテンツの表示速度は約40%短縮されたとのことです。
期待できるポイント
パフォーマンスの大幅改善
PageSpeed InsightsやLighthouseでのスコアが大きく向上しています。Studioは以前から「デザインの自由度は高いがパフォーマンスが出にくい」と言われてきたため、クライアントへの提案時にネックになることがありました。今回の改善で、その懸念を払拭しやすくなっています。
ただし、高スコアの達成には実装のチューニングも必要です。Studio公式がパフォーマンス最適化のチェックリストを公開しているので、YOAKEでも納品フローの品質チェックに組み込む形で運用を検討しています。
SEOインデックスの改善
MPA化により、検索エンジンへのインデックス数が増加した事例がStudio公式サイトで報告されています。特にCMSの動的ページ(ブログ記事やお知らせなど)がインデックスされやすくなった点は、コンテンツマーケティングを前提としたサイト設計において大きな前進です。
SPA構成ではクローラーがJSレンダリングに依存していたため、インデックス漏れが起きやすい構造でした。YOAKEでもSTUDIOで構築されたサイトのインデックス状況を確認する場面がありますが、MPA化でこの構造的な弱点が解消された意味は大きいと感じています。
AIクローラーとの相性向上
2025〜2026年にかけて、AIツール(ChatGPT、Perplexity、NotebookLMなど)がWebサイトのコンテンツを読み取って回答に活用するケースが増えています。Studio公式もMPA化の効果として、NotebookLMをはじめとするAIツールがサイト内容を正しく読み取れるようになった点を挙げています。
YOAKEとしても、クライアントのコーポレートサイトや製品情報がAIの回答に正しく引用されるかどうかは、今後のWebサイト設計で無視できない論点になると考えています。MPA/SSR構成であるかどうかが、AI経由の情報到達に影響する場面は確実に増えています。
アクセシビリティの向上
UIパーツ(トグル、モーダルなど)が最新のWeb標準に則ってHTMLで再実装されており、スクリーンリーダーなどの支援技術との互換性が向上しています。アクセシビリティ対応が調達要件に含まれる案件でも、Studioが選択肢に入りやすくなりました。
注意が必要なポイント
カスタムコードの互換性
新基盤ではHTML構造が大きく変わっているため、既存のカスタムコード(CSS・JavaScript)が動作しなくなるケースがあります。特に、ID以外のHTML要素をセレクタとして使っている場合は要注意です。
既存案件で新基盤に切り替える前には、カスタムコードの動作検証を必ず行う必要があります。切り替え自体はプロジェクト設定から簡単にできますが、「切り替えたら壊れた」という事態を防ぐには事前確認が不可欠です。YOAKEでも、STUDIOで構築済みのサイトについては検証手順を整備してから移行に臨む方針です。
GTM・外部連携サービスの設定見直し
SPA構成を前提にGoogleタグマネージャー(GTM)のトリガーを設定していた場合、見直しが必要です。具体的には、トリガー条件を「履歴の変更」から「ページ閲覧」に変更する必要があります。
GA4やその他のマーケティングツールの計測が新基盤で正しく動作しているか、切り替え後に必ず確認すべきです。SPA前提の設定がそのまま残っていると、ページビューが正しくカウントされないなどの問題が起きます。YOAKEでは日常的にGA4の計測検証を行っていますが、この設定変更は見落としやすいポイントだと感じています。
Beta期間中の制約
2026年4月時点では、新基盤はまだBeta版です。新基盤に関するサポートは原則として提供されておらず、一部の機能で互換性対応が完了していません。未対応機能や既知の問題はStudio公式のヘルプ記事で随時更新されています。
クライアントワークで採用する場合は、Beta版であることを事前に共有したうえで、新規プロジェクトから段階的に導入するのが現実的です。
旧基盤のサポート方針が未確定
Studioは「2027年1月末以降の旧基盤サポート方針」について、今後あらためてアナウンスするとしています。旧基盤のまま運用を続けた場合、新機能が利用できなくなる予定であることは明示されているため、どこかのタイミングで移行は必要になります。
既存案件を複数抱えている場合は、移行計画を早めに立てておくことをおすすめします。
CMS選定への影響:YOAKEではどう判断しているか
今回の基盤刷新は、クライアントへのCMS提案にも影響を与えています。YOAKEでは案件ごとにStudio / WordPress / ヘッドレスCMS(microCMS + Next.jsなど)を比較検討していますが、今回の変化を踏まえた現時点での判断軸を共有します。
Studioが強くなった領域: コーポレートサイトやLP、採用サイトなど、100ページ未満の中小規模サイトでは、パフォーマンスとSEOの改善により、以前よりも自信を持って提案できるようになりました。デザインの自由度の高さとノーコードの運用性を両立できるのがStudioの強みで、基盤刷新によってパフォーマンス面の弱点が大幅に緩和されています。
依然としてStudioでは難しい領域: 会員機能やEC機能が必要な場合、複雑なフォームロジックが求められる場合、100ページを超える大規模サイトでは、WordPressやヘッドレスCMSが引き続き適しています。また、コードのエクスポートができない点はStudioの構造的な制約として変わっていません。プラットフォームに依存し続けるリスクは、長期運用の案件ほど慎重に評価する必要があります。
判断のポイント: これまで「StudioはSEOが弱い」という理由でWordPressを選んでいたケースでは、再評価の余地が出てきました。特にクライアント側でコンテンツ更新を内製化したい場合、StudioのCMSとエディタの使いやすさは大きなアドバンテージです。一方で、カスタムコードへの依存度が高い設計にしてしまうと、基盤更新のたびに検証コストが発生するリスクもあります。YOAKEでは、カスタムコードの使用範囲を最小限にとどめる設計方針を前提にStudioを提案するようにしています。
まとめ
Studioの2026年基盤刷新は、ノーコードツールとしては大きな転換点です。SPA→MPA移行によるパフォーマンス・SEO・AIクローラー対応の改善は実質的で、提案の幅が広がる変化だと捉えています。
一方で、カスタムコードの互換性やGTM設定の見直しなど、既存サイトの移行には手間がかかります。Beta版であることも踏まえ、新規案件から段階的に採用し、既存案件は検証を経てから切り替えるのが現実的です。
「StudioはデザインはいいけどSEOが……」という評価は、2026年時点では見直す時期に来ています。ただし、プラットフォーム依存であること自体は変わらないため、案件の要件に応じた判断が引き続き必要です。YOAKEでは引き続き、技術面の変化を追いながら、クライアントにとって最適なCMS選定を支援していきます。







