興味のままに学びを広げながら、自分の可能性を模索した大学時代
――山田さんは大学でデザインを専攻されていたのですね。当時はどのようなことに興味を持って過ごされていたのでしょうか?
山田: 私は愛知県にある芸術大学のデザイン学部デザイン学科に通っていたのですが、専攻していた「メディアデザインコース」は実技のカリキュラムが非常に幅広くて、自分でテーマを決めて写真集を作ったり、映像を制作したりと、本当にいろいろな課題を経験できる環境だったんです。
そのなかでも私が一番夢中になったのが「架空のフリーペーパーをゼロから企画して、取材に行って冊子として形にする」という課題でした。実際に自分たちでテーマを考え、取材先を探し、誌面の構成やデザインまで一貫して手がけるなかで、「人や場所の魅力を編集して伝えること」の面白さにどんどん惹かれていったんです。
もともと食、ファッション、カルチャー、ライフスタイルに関する雑誌を読むのが好きだったこともあり、地元エリアのカフェ・喫茶店を紹介する雑誌や『Hanako』『BRUTUS』といった世界観のある紙面には特に影響を受けていました。誌面全体の空気感や細かな言葉選びひとつで受け取る印象が大きく変わることに魅力を感じ、自然と編集という領域への関心が深まっていったんだと思います。
――学生時代から、今のお仕事につながる「編集」の原点があったんですね。当時のご自身の強みや課題については、どのように感じていましたか?
山田:大学でさまざまな表現や制作に触れるなかで、自分自身の得意不得意について考える機会も次第に増えていきました。私は良く言えばどんな課題にも幅広く対応できて、一定以上の評価を得ることはできたけれど、「これだけは誰にも負けない!」と自信を持って言えるような、突出した専門性や強みがあるわけではなかったんです。
そんな自分の将来について考えていた卒業間近の頃、お世話になった大学の教授からは「何でもできるのはあなたのいいところだけど、器用貧乏にならないようにね」と言葉をかけられたことは今でも印象に残っています(笑)。
当時は少し気にしていた言葉でしたが、今振り返ると、幅広い要素を見渡してつなげられることは、編集やディレクションの仕事において大きな強みでもあると感じています。
人生の転機に寄り添う、採用広報という仕事との出会い
――大学を卒業されてからは、名古屋の制作会社でキャリアをスタートされたのですね。就職先を考えるなかで、なぜその会社を選ばれたのでしょうか?
山田:就職活動中は、ゆくゆくは上京してみたいという思いもあった一方で、まずは住み慣れた名古屋で働きたいという気持ちがありました。そのなかで、採用広報物制作や採用コンサルティングを行っている会社に出会ったんです。
会社説明会に参加した際には、働いている方々の人柄はもちろん、その会社が手がけている実績そのものに強く興味を惹かれました。企業ごとに伝えるべき魅力や課題が異なり、それを学生や求職者にどう届けるかを、コピーや文章、デザインまで含めて考え抜く。その工夫の幅広さに魅力を感じました。
「ここなら、大学時代に触れてきた編集やライティング、クリエイティブへの興味を活かして、誰かの人生の転換点に深く関わることができるかもしれない!」と感じて入社を決めました。
――その会社で長く勤められるなかで、特に印象深いエピソードがあればぜひ教えてください。
山田:今でもよく覚えているのは、入社2年目の頃に担当した求人広告の制作案件です。
当時、さまざまな企業の求人広告を見開き1ページずつ掲載する求人冊子を、会社全体で一冊制作するプロジェクトがありました。私はそのなかで数社を担当していたのですが、そのうちの一社が名古屋でゴミ収集事業を手掛ける会社だったんです。
お話を伺った役員の方は、創業者であるお父様が立ち上げたその会社で、幼い頃からお父様の懸命に働く背中を間近に見て育った、いわば二代目のリーダーでした。お父様が大切にしてこられた会社への愛着や想いをしっかりと受け継ぎ、熱い情熱と高い志を持って日々の事業に向き合っていらっしゃったんです。その人柄の温かさ、これまでの生い立ち、そして事業を通じて実現したい未来のお話に耳を傾けているうちに、私自身も強く心を動かされました。
山田:お話を伺うなかで、この仕事の魅力を伝えるためには、過度な装飾や派手な演出、誇張したキャッチコピーなどは一切必要ない、と感じたんです。だからこそ、その方の熱い想いがそのまま滲み出るような、嘘のない誠実なキャッチコピーとメッセージを紡ぎました。
求人冊子が発行された後、合同説明会で広告を目にした参加者のうち、2人の方が実際に入社を決意されたという知らせを後からいただいたんです。ゴミ収集という仕事は、決して一般的に人気業種と言われる分野ではないかもしれません。それでも、その会社や役員の方の想いや魅力がきちんと伝わり、「この人のもとで働きたい」と感じてくださる方がいたことが本当に嬉しかったです。自分が言葉にしたものが実際の採用という結果につながり、誰かの人生の選択に関われたことに大きなやりがいを感じました。
ホテルでのアルバイト経験が育んだ、「相手本位」という仕事観
――山田さんと一緒にお仕事していると、打ち合わせ前後のフォローや相手が動きやすいように先回りして情報を整理する姿勢など、日頃からホスピタリティを感じます。そのスタンスは、どこで培われたものなのでしょうか?
山田:そう言っていただけて嬉しいです。振り返ってみると、ホスピタリティを持って行動しようとする姿勢の原点には、学生時代に2年ほど続けていたホテルのレストランでのアルバイト経験があるのかもしれません。
ホテルでは、スタッフの方々の立ち居振る舞いや細やかな気配り、お客さまの様子を見ながら行う接客を間近で目にする機会がたびたびありました。ただ単に業務をこなすのではなく、相手が何を求めているのかを考えながら行動し、心地よい時間を提供する。その姿勢から、ホスピタリティの大切さを学びました。
今も、お客さまや一緒に働くメンバーに対して「どうしたら満足してもらえるだろう」「相手にとってより良い状態をつくるために、自分に何ができるだろう」と考えながら行動するようにしています。たとえば、打ち合わせ前に相手が判断しやすい材料を整理しておいたり、依頼されたことの背景まで考えて先に確認しておいたり。小さなことですが、相手の手間や不安を少しでも減らせるように意識しています。
このスタンスは自分にとってはごく自然なことだったので、以前は特別な強みだとは思っていませんでした。でも、社内外を問わず周囲の方から何か新しい相談をいただいたり、困ったときに頼りにしていただいたりする機会が増えるなかで、この姿勢そのものが自分らしさであり、強みなのかもしれないと思えるようになりましたね。
チームで働く楽しさと、成果に向き合う視点を得たYOAKEでの変化
――2022年からはYOAKEに参画され、働く環境や周りのメンバーが変わったことで、ご自身のなかにどのような変化が生まれましたか?
山田:YOAKEに入ってからは大きく3つの変化を感じています。
1つ目は、「チームで働く楽しさ」を知ったことです。
YOAKEには、本当に幅広い領域の専門性を持ったプロフェッショナルが集まっていて、案件ごとにチームを組みながらプロジェクトを進めていきます。
一方で、前職では入社3年目で東京支社に転勤してから、ほぼ一人で案件を担当することが多くなりました。自分で抱え込んで完結させるのが当たり前になっていたので、YOAKEに入った当初も、周りに相談せずに一人で進めようとしてしまうところがあったんです。
でも、メンバーが「今どんな状況ですか?」「その仕事、手伝いますよ!」と声をかけてくれたり、ランチや飲み会など日常的なコミュニケーションを大切にしていたりする文化に触れるなかで、少しずつ意識が変わっていきました。今はチームで成果を生み出すことの楽しさを日々実感しています。
2つ目は、「届ける相手への視点」が広がったことです。
前職は採用広報に特化していたため、読み手は就職活動中の学生さんや転職を考えている求職者の方が中心でした。ある程度ターゲットが決まっていたので、伝え方や施策にも一定の型があったんです。
しかしYOAKEでは、Webサイト/LP制作や広告、EC、データ活用、マーケティング戦略など、幅広い領域に携わっています。クライアントも業界も多岐にわたるため、その都度「誰に、何を、どのように届けるべきか」をゼロから考えるようになりました。前職でもコミュニケーション設計は重要なテーマでしたが、YOAKEでは扱う領域やターゲットがさらに広がったことで、より多角的な視点で向き合うようになったと感じています。
そして3つ目が、「定性から定量へ」という変化です。
前職では、制作物を納品した後の成果を細かく追う機会はそれほど多くありませんでした。公開したサイトがどれだけ見られたのか、そこからどれだけ応募や採用につながったのかまで、制作側が深く関わるケースは限られていたんです。
それに対してYOAKEでは、自分たちが手がけた施策がビジネスにどのような成果をもたらしたのか、数値や結果を見ながら施策の良し悪しをきちんと振り返ることを大切にしています。
私はどちらかというと右脳派で、感覚や感情を大切にするタイプなのですが、YOAKEではロジカルシンキングやデータに基づいた考え方も求められます。自分が手がけた言葉やコンテンツが、実際にどのような数値として成果につながったのかを説明できるようになることは、今でも難しさを感じる部分です。
ただ、その分だけ自分の視野や専門性が広がっている実感もあって、とても面白い挑戦だと思っています。
――YOAKEのメンバーと一緒に仕事をするなかで、「遠回りに見えた過程が、いい成果につながったな」と感じたエピソードはありますか?
山田:ある大学の関連サイト制作は、チームで取り組むことの良さを改めて実感した案件でした。最初にキャンパスを見学させていただき、そこで感じた大学の魅力や価値を言語化してコンセプトに落とし込むところまでは、とてもスムーズに進みました。お客さまにも提案内容を前向きに受け止めていただけたと思います。
ただ、制作が進むなかで当初の想定とは異なる進め方が必要になり、プロジェクト全体の方向性を何度か見直す場面がありました。そのたびにチーム全員で対話を重ねながら、お客さまの要望や目的に向き合い、より良い形を模索していったんです。簡単な道のりではありませんでしたが、それぞれが自分の役割に責任を持ちながら粘り強く取り組み、最後までやり切ることができました。
特に印象に残っているのが、デザインを担当してくれたYOAKEメンバーの存在です。当初のデザインから方向転換を余儀なくされる場面もありましたが、決して妥協することなく、お客さまの要望の背景にある意図まで丁寧に汲み取りながら、試行錯誤を重ねて形にしてくれました。
その姿を間近で見ていて、一緒に仕事をする仲間のプロフェッショナルとしての責任感や、壁を乗り越えながら成長していく力強さを強く感じました。
遠回りに見えた経験の数々が、今の仕事の土台を作り上げてくれた
――山田さんご自身のキャリアを振り返ったとき、これまでで最も大きな「寄り道」は何だったと思いますか?
山田:私にとって一番大きな転機であり、良い意味での寄り道になったのは「子どもたちが生まれたこと」です。
社会人になってから1年以上仕事を休んだのは初めてでしたし、復帰後も子どもたちの体調不良などで予定通りに働けないことが多く、自分の思うように仕事が進められないもどかしさを感じることもありました。
ただ、その経験を通じて「時間は無限ではない」という当たり前のことを、身をもって実感したんです。限られた時間のなかで、どうすれば最大限の成果を出せるかを以前より強く意識するようになりました。
もともと私は時間管理があまり得意ではなくて、重い仕事を後回しにしたり、締切直前に何とか間に合わせたりすることも少なくありませんでした。でも今は、できるだけ早めに着手することや、どの業務にどれだけ時間をかけるべきかを考えることを意識しています。また、効率化できる細かなタスクについては色々なツールも活用しながら、コア業務とノンコア業務を切り分けるようになりました。結果として、時間の使い方そのものが大きく改善されたと感じています。
振り返ってみると、当時は遠回りに思えた経験でしたが、今のYOAKEで働くうえではとてもプラスになっています。限られた時間のなかで成果を出す視点や、優先順位を見極める力は、チームで仕事を進めるうえでも欠かせないものですし、自分自身の働き方を見直す大きなきっかけになりました。
何より、当時は寄り道の要因のようにも感じていた子どもたちの存在が、今では働くうえでの一番の原動力です。彼らの成長する姿に励まされながら、自分自身も仕事を通じて挑戦を続けていきたいと思えるようになりました。
――一人で背負い込むのではなく、チームメンバーと助け合うことの豊かさを知った山田さんだからこそ、今、伝えられるメッセージがあるように感じます。かつての山田さんのように「自分の強みがわからない」とキャリアに迷っている人たちへ、一歩踏み出すためのアドバイスをいただけますか?
山田:私自身、学生時代も社会人の若手時代も、「自分にはこれと言った強みがないな」「自分は何者なんだろう」と、ずっとよく分からずにいたんです。だから、現在同じように悩んでいる方の気持ちはすごくよく分かります。
でも、キャリアに迷っている時期に無理に「特別な何者か」になろうとしたり、明確な目標を定めたりしなくてもいいんじゃないかな、と個人的には思っています。
とにかく目の前にある与えられた役割や、任せてもらった仕事に対して、実直にコツコツと取り組んでみる。その一つひとつの仕事に対して、「どうしたらもっと喜んでもらえるだろう」「どうしたら認めてもらえるだろう」というスタンスで、ちゃんと自分なりの意味を見出して取り組んでいくことが何より大切だと思うんです。
そんな姿勢を大切にしていれば、自分では気づいていなかった良さや可能性を見出してくれる人が現れたり、少しずつ結果もついてくるようになるはずです。もしも同じような価値観で一緒に仕事を楽しめる仲間がいたら、ぜひYOAKEで共に働きたいです。
明日へのTips
山田さんの歩みから学ぶ、明日へのちょっとしたヒント。
- 1.
「器用貧乏」だと思っていた強みを、「つなぐ力」として捉え直してみる
- 2.
心地よい気遣いに出会ったら、「なぜ嬉しかったのか」を考えてみる
- 3.
「何者かにならなきゃ」という焦りより、目の前の仕事を大切にする







