配色
「色はそれひとつというよりも、むしろ異なる色との連関のなかに意味を持つことが多い。」 —出典:カラー版 日本デザイン史(森山 明子)
日本古来の色彩感覚についての一文ですが、上記が示しているのは、 色の強さそのものではなく、関係性の中で意味が立ち上がるという考え方です。 例えば、十二単などにも見られる日本の「かさね色」は、 一色で完結するのではなく、複数の色の重なりによって季節や情緒を表現してきました。
出典:婦人画報「源氏物語に描かれ、十二単にも使われる配色美「かさね色目」とは?」 この視点は、WEBデザインにもそのまま接続できます。 配色は「ブランドカラーをどう使うか」という単体の話に寄りがちですが、実際には
- どの色と隣接するか
- どの順序で認識されるか
によって、印象や意味は大きく変わります。
たとえば同じ青でも、白の上に置かれるのか、グレーの上に置かれるのか、 あるいは暖色と組み合わされるのかによって、信頼感にも冷たさにも振れます。
実務でも、「とりあえずブランドカラーを置く」だけだと、 途端にデザインが軽く見えてしまうことがあります。
色は単体では機能せず、「隣に何があるか」によって意味が立ち上がります。 つまり、色は「選ぶもの」であると同時に、配置し、関係づけるものでもあります。
実務に落とし込むとすれば、
- 色の役割だけでなく、隣接関係まで設計する
- ユーザーが色を認識する順序を意識する
- 強い色を足すのではなく、色同士の距離感で印象を調整する
といった視点が有効です。
かさね色の発想は、「色を増やす」ではなく「意味を重ねる」こと。 単色の強さではなく、関係性の設計が表現の質を引き上げてくれます。
幾何学
日本古来の幾何学的な形象は、単なる装飾ではなく、 意味を宿す記号として用いられてきました。
たとえば、紙垂(しで)やしめ縄は一見すると単純な形ですが、
- ここから先は特別な領域である
- 目に見えない存在がそこにある
といった概念を可視化するための装置です。 つまり、形そのものが意味を伝える役割を担っています。
この考え方は、WEBデザインにおける情報設計とも重なります。 UIの要素はすべて、何らかの意味を伝えるための「形」です。
- 枠線:情報のまとまり
- 区切り線:文脈の切り替え
- ボタン:操作可能な領域
- 余白:関係性の整理
ただ実務では、これらが“なんとなく”決められてしまうことも少なくありません。 本来は、「この形は何を示しているのか」という意図が先にあるべきものです。 形もまた、意味を伝えるための一種の言語と捉えることができます。
日本的な幾何学の視点に立つと、
- 形は装飾ではなく、意味の伝達手段である
- シンプルであるほど、意味は純化される
- 抽象的な形ほど、文脈設計が重要になる
といった原則が見えてきます。
要素を増やして説明するのではなく、 最小限の形でどこまで意味を伝えられるかを考えること。
その積み重ねが、結果としてわかりやすさや美しさにつながります。
ユーザーインターフェイス
日本のプロダクトデザインを語る上でよく挙げられるのが、 柳宗理のやかんです。
出典:ステンレスケトル – 柳宗理 /YANAGI DESIGN :柳工業デザイン研究会 その特徴は、シンプルな造形でありながら、持ちやすさや注ぎやすさが自然に成立している点にあります。 そしてそこには、「使い方を説明しない」という思想が通底しています。
「短時間の「計画」ではなく、生活という「生きた時間の推積」が物の形を必然的に生み出し磨きあげるという発想である」 —「民芸」の運動について 出典:デザインのデザイン(原研哉)
機能が設計によって“与えられる”ものではなく、 使われる時間の中で“磨かれていく”という考え方です。
柳宗理のやかんも、単に合理的に設計されたというより、 使われ方に寄り添いながら形が洗練されていったプロダクトと言えます。
この視点は、UI/UXにも応用できます。
WEBデザインにおいても、
- ボタンが直感的に操作できるか
- 操作の結果が自然に理解できるか
- フォームが迷いなく入力できるか
といった、「説明されない使いやすさ」が重要になります。
多くの場合、UIは説明を足すことでわかりやすくしようとしますが、 本質的には、説明しなくても理解できる状態を設計することが理想です。
そしてそれは、一度の設計で完成するものではなく、 ユーザーの行動やフィードバックを通して少しずつ磨かれていくものでもあります。
まとめ
日本デザイン史を手がかりに、いくつかの視点を整理してみました。
配色における関係性、形に宿る意味、そして使われる中で磨かれるインターフェイス。 いずれも共通しているのは、「見た目」ではなく、どのように伝わり、使われるかという点に重きが置かれていることです。
WEBデザインはトレンドに左右されやすい領域ではありますが、 こうした視点は時代を超えて有効な原理に近いものと言えそうです。
今回の内容はあくまで一つの整理に過ぎませんが、 日々の実務の中で、「なぜこの形なのか」「何を伝えているのか」と立ち返るきっかけになれば幸いです。
過去の蓄積に目を向けることで、 現在のデザインもまた、少し違った解像度で見えてくるかもしれません。







